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【或る女】 著:有島武郎  ナレーション:斉藤範子

小説
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「まあおそくなってすみませんでした事・・・まだ間に合いますかしら」

と葉子がいいながら階段をのぼると、青年は粗末な麦稈帽子をちょっと脱いで、黙ったまま青い切符を渡した。

「おやなぜ一等になさらなかったの。そうしないといけないわけがあるからかえてくださいましな」

といおうとしたけれども、火がつくばかりに駅夫がせき立てるので、葉子は黙ったまま青年とならんで小刻みな足どりで、たった一つだけあいている改札口へと急いだ。

改札はこの二人の乗客を苦々しげに見やりながら、左手を延ばして待っていた・・・


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