【裂けたレオタード】 著:由紀かほる  ナレーション:藤色朔 / でじじ

小説

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3.5

川井日出男は停年退職してから、NBS食品に清掃係として働いていた。

NBS食品には有名な新体操チームがある。

彼が今の仕事で唯一楽しみにしているのは、色とりどりの薄いレオタードに身を包んだ、若い娘たちのみずみずしい肢体を間近に見られることであった。

「川井さん」

不意に声をかけられて、川井はギクリとしてふり返った。

「こんにちは」

新体操のコーチをしている風祭ユリ子だった。

彼女は三年前まで現役だった美貌のユリ子は、川合にとっては女神のような存在だった。

ユリ子と別れた後、更衣室に軍手を落としたことに気付いた川合は足早に引き返した。

ゴミ箱の横に落ちていた軍手を拾うと、すぐ傍らからシャワーの音が聞こえる。

川井の眼は木の四方形に区切られたロッカーに吸い寄せられた。

その中に一つに、たった今ユリ子が脱いだに違いない青いレオタードや下着の類が綺麗に畳んで置かれていたのだ。

この時間には選手たちが更衣室を使用することはない。

見つかれば仕事を失うこともわかっていながら、川合は欲望を押さえることが出来ずにいた・・・


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